相続における遺産分割協議の必要性と実施条件について

①遺産分割協議とは

 遺産というのは、相続されるまでは、相続人全員の共有財産となります。もし、相続人が一人であれば、すぐに相続が可能ですし、分割の必要はありません。

しかし、通常、相続人が2人以上というのが多いケースとなり、このように相続人が複数の場合には、その分割についてきちんと決める必要があるのです。こういった決議は、そう簡単には決まりませんので、その間は、遺産というのは相続人全員の共同相続財産となるわけです。

こういった、相続人での遺産の分割について話し合い、決めるのが、遺産分割協議、と呼ばれるものとなります。みなが一旦共同で相続した財産を、誰に、そしてどのように分割するのかを決めるための協議といってよいでしょう。

この遺産分割協議には大前提があります。それは、相続人全ての参加が必要、ということです。たとえ1名でも不参加な相続人がいた場合には、せっかく開催した遺産分割協議自体が無効となってしまいますので、注意が必要です。たとえ、行方不明だったり、音信不通だったとしても、その人を除いて成立するわけではありません。そういった場合には、行方不明、生存不明の人について、所定の手続きが必要となり、その上での開催となります。

②遺産分割協議書について

 遺産分割協議において、遺産を誰がどう分割して相続をするか、全員で決めるようになります。こうして、遺産分割協議が成立した場合、その結果についての書類を作成するようになります。これが、遺産分割協議書、都呼ばれるものです。基本的には、遺産分割協議書は相続人が11通ずつ所有するようになりますので、相続人の数だけ作成するようになります。そして、その遺産分割協議書に対して、全員が署名、捺印をするわけです。

この遺産分割協議書ですが、絶対に作成が必要と定められているわけではありません。相続のかたちによっては、遺産分割協議書は不要という場合もあります。しかし、相続の対象となっているのが不動産などであれば、その相続にあたっては、所有権の移転登記が必要となりますが、その手続きにおいて遺産分割協議書を添付する必要があるのです。

遺産分割協議書を作成するには、遺産分割協議の内容をまとめるようになります。その上で、遺産の相続人全てが署名捺印をすれば、あとは、それぞれが名義変更手続きなどをするにあたっても、手続きがスムーズに進むようになります。また、こういった遺産分割協議書というのは、協議の後のトラブル防止のためにも、作成するほうがベターだということもいえるでしょう。

③遺産分割協議の開催において

 遺産分割協議においては、相続人の全員参加が必要となりますが、それを確認するためにも、被相続人の戸籍や除籍、改製原戸籍などを、すべて取り寄せて確認するようになります。こうすることによって、戸籍上の相続人をあらためてしっかり確認するためです。こうした上で、相続手続きを進められるようになります。

また、遺産分割協議の参加者については、たとえ子供でも、不参加でよいという訳にはいきません。もし、相続人とされる人中に子ども、つまりは未成年者がいる場合は、その未成年者の親権者が法定代理人として協議への参加が求められます。ただ、こういった場合、その親権者本人も相続である、というような場合が少なくありません。そういった場合には、家庭裁判所によって、特別代理人が選任されるようになります。こうすることで、その親権者と、未成年者の利益相反を防ぐためです。

また、相続人として胎児もカウントされます。相続においては、胎児も生まれたものとみなされるからです。さらに、胎児については、代理人を立てて遺産分割協議を進める、というわけにはいきません。胎児の誕生以降に、協議を行う必要があります。そして、この生まれた子供に対しても、親が相続人であるような場合には、特別代理人を立てるようになります。