認知症の人の相続手続きには後見人が必要です

相続人の中に認知症の方がいた場合には、通常の相続手続きは無効で遺産分割協議を行っても法的に認められないのです。認知症は理解力や判断力の低下する病気であり、自らが相続できる金額の把握や正しい相続手続きを行う事は困難なのです。よって相続人に認知症のある方がいる時には、法定代理人として後見人を選任する必要があるのです。

相続手続きを認知症を抱える相続人に代わって行う後見人を選任するためには、家庭裁判所で申し立てを行う必要があります。その際に認知症についての鑑定などの様々な手続きが行われるため、選任には3ヶ月ほどの時間がかかります。後見人が選任されてから初めて相続の協議が行えることになりますので早めに弁護士等に相談する事が大切です。

認知症の相続人以外の法定相続人がいない時には、専門家を探したり後見人となってくれる人を選ぶ事も困難となります。民生委員や地域包括支援センター、社会福祉協議会など地域の力がスムーズな相続手続きを支援する事になります。常に地域内に認知症が疑われる人がいないかを把握し、事前に後見人を選任しておく事が大切です。

相続人に認知症の人がいる時には後見人の存在が必要である事を理解し、トラブルなくスムーズに相続手続きを行う状況を事前に作っておく必要があるのです。

後見人については事前に家族が選任されている場合もあります。しかし相続の際には家族が後見人であっても本人の代理人として認められないのが現状です。家族とは別に後見人を選任する必要があるのです。

つまり家族がいくら自分が後見人だと言っても家庭裁判所は相続に関しては認めてくれないのです。遺産分割協議をせっかく行っても認められず、銀行等でやり直しを求められる事もあるため注意が必要なのです。

認知症の方が相続人の中にいる場合、後見人の選任まで3ヶ月の時間がかかる事を考えると事前に家族以外の後見人について専門家に相談しておく事が重要です。それをする事によって早めに相続手続きを行う事が可能なのです。

法的な言葉で表現すると、家族は利益相反の関係と言われて認知症のある相続人の利益保護のために家族間だけで相続手続きをする事は出来ないのです。これを十分に理解しておく必要があります。

認知症の方が相続人の中にいる場合には、様々な制限がある事を認識し、通常の手続きが行えない事実をしっかり受け止める必要があります。財産は相続人すべてに受け取る権利がある事を忘れてはいけないのです。

相続には様々なトラブルが考えられますが、それを防ぐためにも事前に被相続人が公正証書遺言を作成して弁護士等に預けておくなど、元気なうちに対策を行う事も大切です。遺産分割は相続人すべての同意が前提となるため、分割がスムーズに出来るように事前の対策が重要なのです。

また、認知症のある方が相続人にいた場合には、その権利が侵害されないように専門的知識を持った弁護士等の専門家は欠かす事は出来ないのです。専門家が間に入る事で、相続人同士の冷静な話し合いや確実な遺産の分割につなげる事が出来るのです。

認知症の人は、理解力の低下等の症状によって非常に弱い立場に置かれる事があります。人間としての尊厳を保つためにも専門家が代理人となって相続の支援をする必要があるのです。

家族とは別の後見人を選任し、確実な遺産分割を行っていくために弁護士事務所、地域包括支援センターなどの支援機関を積極的に活用する事が大切です。認知症の鑑定等で後見人選任には時間がかかりますので早めの相談が必要です。

これからは高齢者社会の進展により、認知症の方が相続人の中にいるケースは増えてくる可能性があります。人権を侵害する事のないように、相続に関する知識は誰もが認識しておく事が重要なのです。