相続人になる、前妻の子供たち

わが国でも三組に一組の夫婦が離婚するといわれています。


離婚して再婚する人も多いため、相続手続きに前妻の子供がかかわることもあります。これは避けられないことなのでしょうか。民法では法定相続人の範囲が定められていますが、その中には第一順位の相続人として、被相続人の子供が挙げられています。ここで子供というのは、離婚前の、あるいは結婚しないで生まれた子供も当然含みます。

このことから、前妻の子供や認知した子供も、相続手続きには法定相続人として必ず関与させる必要がありこれを避けることはできません。手続きには法定相続人として必ず関与させる必要がありこれを避けることはできません。

例えば遺言がない状態で被相続人が死亡した場合に、相続の手続きとして必要になる遺産分割協議では、法定相続人全員が必ず話し合いによって相続財産の分配を決める必要があり一人でも法定相続人が欠けた遺産分割協議は法的には無効になります。

このことから、被相続人が死亡した際にまずしなければならないのは、その人の法定相続人が誰かを戸籍謄本除籍謄本などの記録を収集して確定して連絡を取ることです。こうした戸籍の記録の収集は司法書士などの専門家に依頼することもお勧めです。



被相続人の中には、離婚後にできた子供たちに対し、離婚前の事情をよく説明しないままの人もいます。離婚歴と再婚歴がそれぞれ複数あっていずれの結婚中にも子供がいるという人もいます。中には被相続人が死亡した後の相続手続きで、聞かされていなかった前妻の子供がいるということを知る相続人もいます。

このために被相続人の死亡後、戸籍の記録を集めて法定相続人がだれであるかを調査する必要があるのです。被相続人の戸籍は出生までさかのぼることができ、被相続人が結婚していた期間中に生まれた前妻の子供や、被相続人が認知した子供は戸籍の記録からすべて明らかにすることができます。それらの法定相続人の最新の戸籍をとれば、戸籍の保証という書類から法定相続人たちの現在の住所がわかります。

そうして調査した法定相続人の中には前妻の子供など全く面識のない人がいたり、中には既に死亡していて、その人のさらに子供(被相続人の孫)が法定相続人としてかかわってくるということもあるでしょう。相続手続きに際してこれらの調査と連絡は、法定相続人の本人が不用意に行ってもうまくいかないことがありますので、弁護士などの専門家に相談してもよいでしょう。通常はまず手紙などで連絡を取り、遺産分割協議への協力を求めます。協力を得られなかったり、相手が弁護士を選任して強硬に権利を主張してくるような場合には、家庭裁判所の遺産分割調停の申し立てを検討することが必要です。遺産分割協議では弁護士を代理人にすることができるほか、遺産分割の調停は弁護士や司法書士が申し立てにかかわることができます。




どうしても前妻の子供たちを相続の手続きから排除したい場合には何か方法があるでしょうか。

相続手続きで確実にそれを可能とする方法はないのですが、被相続人が死亡する前に遺言書を作成することで、ある程度被相続人の意向によって遺産の分割を進めることができます。例えば被相続人に前妻の子供がいて、その子供には自宅の不動産を渡したくないというような場合には被相続人にあらかじめ遺言書作成してもらい、その遺言書の中で自宅の不動産を今の配偶者やその子供たちに相続させると指定することができます。

しかし遺言によっても前妻の子供たちに全く財産を相続させないと指定することはできません。民法には遺留分という制度があります。これは、被相続人が作成する遺言によってもある範囲の法定相続人に全く財産を分配しないということを許さない制度です。被相続人の子供には法定相続分のさらに二分の一の遺留分が認められています。

この遺留分を下回らない範囲で遺言を作成して遺産の分割方法を定めておくことが推奨されます。ただし、相続手続きにおいて遺留分に関する権利の行使(遺留分減殺請求)は、常に行われるものとはかぎりませんので、遺留分減殺請求を受けたらその後に対応することにしてまず遺言書作成するという方針も考えられます。

今の配偶者ではなく、前妻の子供たちに遺産を渡したいということも逆に考えられます。被相続人が死亡した時点で離婚していない配偶者も法定相続分の二分の一の遺留分が認められますから、遺言で前妻の子供たちに遺産を渡す場合配偶者からの遺留分減殺請求を考慮に入れて遺言を作成するのがよいでしょう。