相続における遺産分割協議の流れと注意点

◆遺産分割協議とは?

遺産分割協議とは、遺産を分ける相談のことです。遺言が残されているのなら、その遺言の指定どおりに遺産を分割して相続したらよいわけです。遺言がない場合は、民法で規定されている割合で分割して相続することができます。しかし、相続する権利のある全員が話し合って合意すれば、遺言の指定どおりにしなくてもよく、民法で規定されている法定相続分どおりでもない割合で分割することもできるわけです。遺産分割協議は、すべての相続人が合意する必要があるため、相続人の1人が失踪して行方不明だからといって、その人が参加しなければ、その遺産分割協議は無効ということになります。

 

また、遺産をめぐる骨肉の争いというものが、よく話題になることからお分かりのように、遺産分割協議というものはもつれるケースが少なくありません。遺産分割の話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所で「調停」をしてもらうことになります。調停委員が相続人から意見を聞いたり、裁判官が解決案の提示をおこないます。この調停で協議がまとまらない場合には、次のステップに進み、家庭裁判所で「審判」してもらうことになります。裁判所が相続の割合を決めるわけです。それでもなお遺産分割協議がまとまらないということになると、「裁判」で争うことになります。

 

◆遺産分割の流れ

遺産分割の流れを、もう少し細かく見てみましょう。

 

  1. 遺言による分割

遺言はいくつかの方法がありますが、遺産分割の方法を被相続人が指定しておくことができます。

 

  1. 遺産分割協議

遺産分割協議が必要になるのは、次のようなケースです。

 

1)遺言がない場合

2)遺言にすべての財産が書かれていない場合

3)遺言に相続する財産の割合だけしか書かれていない場合

 

遺産分割協議は、すべての相続人の合意が必要なことはさきほども触れましたが、全員が合意すれば、どのような内容でもよいということになります。たとえば、誰か一人だけが遺産のすべてを相続するという合意もありえるわけです。全員が合意した内容を、「遺産分割協議書」に記載することになります。

 

  1. 遺産分割調停

分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをすることができます。調停は、調停官や調停委員が相続人の間に入って調整をはかります。調停により合意すると調停調書が作成されますが、この調停調書には判決と同じ効力があります。

 

4. 審判による分割

調停でまとまらないと、自動的に審判手続きに移ります。審判は、家事審判官(裁判官)が調査や証拠調べを職権でおこない、遺産分割の方法を決定するのですが、多くの場合、和解案を提示することになります。

 

5. 高等裁判所で争う

審判の決定に不服のある相続人は、告知を受けた日から2週間以内に高等裁判所に異議申立て(即時抗告)をすることができます。遺産分割は、高等裁判所で争われることになります。

 

◆遺産分割協議の注意点

遺産分割協議には、いくつか注意点があります。

 

遺産分割協議には、いつまでに決めなければならないというような期限はないのですが、相続税という点から考えると、いつまでも長引かせるわけにはいきません。相続開始後10か月以内に遺産分割協議がまとまらなければ、相続税の軽減措置を受けることができなくなります。たとえば、配偶者控除がそれにあたります。

 

相続人の中に未成年者がいる場合には、親が代理することになりますが、親も遺産分割協議に関係しているとなると、親子の利害が対立することになります。このようなケースは、家庭裁判所に「特別代理人」の申し立てをおこないます。

 

遺産分割協議での遺産の放棄と家庭裁判所での相続放棄は違いますので、混同しないようにする必要があります。家庭裁判所で相続放棄が認められると、その人は初めから相続人ではなかったことになるのです。相続人は、財産を相続するだけではなく、借金も相続するのですが、相続放棄が認められれば、借金も相続しないということになります。しかし、遺産分割協議で遺産を放棄したとしても、家庭裁判所で認められたわけではありませんから、相続人としての権利が消滅しているわけでありません。つまり、亡くなった方に借金があれば、遺産分割協議で遺産の相続を放棄したのに、その借金だけは相続するということになってしまうのです。