相続における銀行口座の手続き

被相続人の死亡が確認されると、銀行口座が凍結されます。

これは遺言書や遺産分割協議によって分配が完了するまでの間、その預金に対して権利がない人のアクセスを阻止するためです。
死亡届けを受理した役所から連絡が行くことはありませんから、不正な引き出しを避けるためにも家族、親類が申し出ることが重要です。

凍結された口座については引き出しと預け入れができなくなる他、公共料金の口座振替や振込みの受け取りもできなくなるので、凍結の申請時にはそれらの指定口座を変更する手続きを同時にする必要があります。

口座の凍結後によく問題になるのが葬儀費用の工面です。
一般に葬儀費用については喪主や親族で一旦建て替えることが多いのですが、それができない場合には亡くなった方の口座から引き出すしかありません。

この場合には例外として、被相続人の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書、銀行が求める書類、手続きをする人の身分証明書を用意することで150万円程は引き出せる金融機関がほとんどです。

郵便貯金でも手続きができますのであらかじめ確認しておくと安心です。
因みに葬儀費用は相続税の対象外ですので、領収書を必ず保管するようにしましょう。

銀行の預金口座の払い戻し・名義変更手続き

銀行預金を相続した場合にとる手続きは遺言書によって行われるものと、遺産分割協議によって行われるものかで少し異なります。

遺言書がある場合には、公正証書遺言もしくは、家庭裁判所で検認を済ませた自筆遺言書(検認証明書を発行してもらう)と、通帳などの銀行書類、亡くなった方の全部事項証明つきの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書を揃えます。
遺言執行人がいる場合には相続人ではなく遺言執行人の印鑑証明書と選任審判書です。

遺産分割協議をした場合には、遺産分割協議書を作成し遺言書の代わりに提出します。
郵送でも提出可能ですが、不備があればやり取りに余計に時間がかかりますので、不安であれば窓口に持参した方が良いかもしれません。

なおこれらの公的書類は申し出ることで返却してもらうことも可能ですから、確認されることをお勧めします。

ところで遺言書も遺産分割協議書もないケースもあります。
例えば相続人が1人の場合などがそうですが、その場合はそれらの書類以外のものを揃えれば大丈夫です。

また話し合いが揉めて家庭裁判所の調停や審判になった場合は、その書類と預金相続者の印鑑証明書だけで預金払い戻しの手続きをすることができます。

 

なお、通帳や貸し金庫の鍵など、残された家族には所在の分からないものもあるかもしれません。
このため通帳などは必ず探し出さなければならないことはなく、その他の書類に不備が無ければ払い戻されます。
一般に通帳を無くしても預金が無くなるわけではく、本人確認ができれば再発行が可能ですから、それと同じように考えることができます。

銀行での相続手続きは大変

先に述べたように銀行の預貯金の相続手続きには収集・作成しなければならない書類が多数あり、一般の方が全て行うのは非常に大変です。

しかも、書類を提出してから払い戻しまでは最低1ヶ月、長ければ数ヶ月かかります。
長くかかってしまうのは銀行の窓口での躓きが一番の原因です。

それぞれの銀行によって審査方法はまちまちですが、相続関係の書類審査は各金融機関が専門の部署を設けていて、全ての支店に提出された書類は一旦その部署に移され審査されます(これは金融機関にもよります)。
裏返せば各支店の窓口は必要書類についての知識が少なかったり法律に関して不慣れなことが多いので、相続人にとっても手続きが煩雑になります。

司法書士にご依頼いただければ、銀行とのやり取りも含めて、預貯金の相続手続きを代行することができますので、お気軽にご相談いただけれ徒思います。