胎児が相続人の場合~胎児は相続人となり得るのか?

相続人はどこまで?

 

もうすぐ出産予定だったのに、突然旦那さんが事故や病気などで他界してしまった場合、残された妻はお腹の子を抱え途方にくれることになります。
その後、相続の手続きなど、様ざまな法定手続きを行っていかなければならないのですが、胎児は果たして相続人となることが出来るのかどうか、悩む部分ではないでしょうか。

一人で出産し、子供を育てていくのに、遺産はとても大切です。生まれてくる子供のためにも、相続させてあげたいものですね。

通常、身内の方がなくなった場合、相続が発生します。この相続人に当たるのは、亡くなった方の親族となるのですが、相続が開始された時点で権利能力を持っている親族でなければなりません。

この民法で認められている、権利能力に関しては、出生と同時に発生すると決められているので、まだ出生していない胎児には権利能力が発生しません。

 

しかし相続に関しては例外とされています。
通常の法定手続きに、胎児は権利能力がないとされますが、相続に関しては出生していなくても権利能力が発生し、お腹の中にいながら、相続人となることが出来るのです。

 

2.胎児の相続方法

胎児が相続人となれるとしても、胎児の状態では遺産分割協議に参加するのは不可能です。

法定手続きを行う際、未成年者の代理人としては通常は親権者である父親か母親がなり、手続きを行うものなのですが、この場合、母親も相続人に当たるので、胎児にとって不都合な遺産分割を行ってしまう危険性がないよう配慮するために、例え母親でも同じ立場の相続人である以上、代理人になることができません。

 

ではどうしたら良いのか。

この場合は、相続と無関係になる方を代理人に立てる必要があります。相続に関係ない成人の方であれば、親戚などでもかまいません。

また、親戚など代理人に適する方を見つけられない場合は、司法書士など、専門知識を持った方に依頼することも可能です。
こういった司法書士などの専門職に依頼すると、より公平でスムーズな遺産分割を行えるので、安心です。

胎児の相続として特別な代理人を立てる場合は、母親が住んでいる地域の家庭裁判所で申請を行えます。通常は未成年者の戸籍謄本も必要となるのですが、まだ生まれていないので、申立人と代理人の戸籍謄本を用意して手続きを行いましょう。

この他にも、その裁判所や、相続人の状況によって必要書類が変わってくることがあるので、あらかじめ確認しておくといいでしょう。

 

3.胎児は無事生まれるとは限らない

残念なお話ですが、今お腹の中ですくすく育っている胎児も、無事生まれてくるという保証はありません。もしかしたらお腹の中で亡くなってしまったり、出産時に亡くなってしまうことも考えられるのです。

胎児がお腹の中で生きている場合には相続人として相続する権利を有することができますが、その命を失くしてしまうと、相続は発生しません。
命あってこその遺産相続ですので、手続きが混乱しないためにも、遺産分割協議は胎児が無事に出生されてから行うのが望ましいでしょう。

どんなに時間がかかっても、10か月あれば必ず胎児は生まれてきます。無事出産を経てから相続の手続きを行っても遅すぎることはないでしょう。

相続人が亡くなった場合、普通は代襲相続が行われます。この代襲相続は、胎児の場合も適用されます。しかし、この相続は、相続人が亡くなっている場合、その相続人の子、孫、ひ孫、もしくは、姪、甥という直系か傍系の卑属に相続が受け継がれることとなります。

その相続人の親や配偶者には認められないので、胎児の場合、引き継ぐべき相続人がいないということがほとんどでしょう。

妊娠中に突然の訃報で衝撃を受けることとなるでしょうが、お腹の赤ちゃんは大切な味方となってくれます。お辛いでしょうが、先ずは赤ちゃんの健康を守ることに専念し、無事出産し、亡くなった方からの大切なプレゼントである相続を行いましょう。